「最良のクリスマスプレゼント」(2020,12,25)
クリスマスのまえだっただろう。
小さな頃からひねくれ者だった私は、
サンタさんに手紙を書いて例年通りプレゼントをお願いした。
「まいとしありがとう。サンタさん。
ことしは、おともだちとおなじものはいりません。
だれもみたことも、もったこともないものをください。」
そう書いて、母に住所を書いてもらい、
サンタさんに手紙を届けてもらった。
クリスマスの朝。
枕元に置いてあった赤と緑のチェック模様の包装紙を開けると、
出てきたのは何とも言い表すことのできないものだった。
丸でもなければ三角でもなく、もちろん四角でもない。
平面でも立体でもない。
温かくもなければ冷たくもない。
固くもなければ柔らかくもない。
そもそも、これが生きているのか、生きているものではないのか、
それさえも全く分からなかった。
母や父に
「これもらったの。」
と話すと、
母は、
「なあに?これ?」
と目をぱちぱちさせた。
父は、
「うーん、これは、えたいの知れないものだねえ…。」
と言ったきり、またテレビのニュースに釘付けになってしまった。
それ以来、私はもらったもののことを、
「えたいの知れない」
と呼ぶことにした。
あれから私は距離の近くなった人達に積極的に
「えたいの知れない」を見せてまわった。
しかし、誰もが、
「何だろう?」
と首を傾げるばかりで
「えたいの知れない」が何であるのかという答えは出なかった。
大人になった私は今も「えたいの知れない」を所持している。
私が死んだあと、「えたいの知れない」がどうなるのか、それだけが気がかりだ。